アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。皮膚のバリア機能の低下とアトピー素因(体質的要因)が重なったところに、外からのさまざまな刺激(環境的要因)が加わることで発症します。かゆみがひどく、つい皮膚をかきこわし、さらなるバリア機能の低下と炎症を引きおこしてしまう悪循環に陥り、治療は長期となることも特徴です。
体質的要因
アトピー性皮膚炎を発症する原因に体質的要因があります。体質的要因とは、本人または家族にアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患があったり、IgE抗体(アレルギー反応に関与する抗体)ができやすい体質であることいい、「アレルギーを起こしやすい体質」と考えるとわかりやすいでしょう。
環境的要因
アトピー性皮膚炎を悪化させる原因として、環境的要因があります。食物アレルゲン、ダニ、ハウスダスト、花粉などの環境アレルゲン、その他にも汗、ストレス、空気の乾燥なども刺激として悪化要因になります。1つの要因だけでなくさまざまな要因が重なり合って起こることが多いため、これらの悪化要因の対策を行うこともアトピー性皮膚炎を治療する上でとても大切です。要因の特定は、症状や検査結果のみではなく経過を診て判断します。
アトピー性皮膚炎を予防するには
アトピー性皮膚炎を発症しやすい人は、乾燥肌であったり炎症を起こしやすかったりと、肌が弱い傾向にあります。アトピー体質でも幼い頃は症状が出ず、大きくなってから環境的要因で発症するようなケースもみられます。アトピー性皮膚炎は基本的に医療機関での治療が不可欠ですが、悪化原因を知って生活から取り除き、毎日のスキンケアで皮膚のバリア機能の低下を防ぐなど、適切な治療と環境整備を行いましょう。
保湿剤を使って皮膚のバリア機能を高める
アトピー性皮膚炎の予防は、肌を保湿することがとても大切です。季節や症状の有無に関わらず毎日保湿剤を塗ってあげましょう。特に入浴後は、身体を拭いたらすぐに保湿剤を塗ることで水分が外に逃げるのを防ぐことができます。薄く伸ばしては十分な効果が得られないため、たっぷりの量をこすらないよう優しく全身に塗り広げます。
保湿剤にはクリームタイプやローションタイプなどさまざまな種類があります。発症予防の場合はお好みに合わせて使用感の良いもので構わないとされています。症状がある場合は、症状に合った保湿剤を処方してもらうためにも皮膚科の受診を検討しましょう。
経皮感作
経皮感作とは、食物やハウスダストなどのアレルゲン物質が皮膚についたことが原因でアレルギーを発症してしまうことをいいます。正常な皮膚は角質に守られており、その隙間はとても狭いため、異物が侵入してくることはほとんどありません。しかし、乾燥や湿疹、傷などで角質が破壊されると隙間が拡がり、そこから異物(アレルギー要因)が侵入した結果、それまで反応を起こさなかった物にもアレルギー反応を起こすようになってしまいます。洗顔料やスキンケアにおいても、植物成分に含まれるたんぱく質が使われている製品も多くあり、使い続けているうちに経皮感作を起こし、食品として摂取した際に食物アレルギーの症状が出現することがあります。
アトピー性皮膚炎の方は特に、皮膚のバリア機能がうまく働いておらず、異物が侵入しやすい状態であると考えられています。経皮感作を起こさないよう、こまめな掃除によるハウスダストの除去やスキンケアの成分にも気をつけると良いでしょう。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎治療の最終目標は、症状がないか、あっても日常生活に影響がなく、薬による治療をあまり必要としない状態が続くことです。最終目標に到達しない場合でも、急激な悪化が起こらない状態が続くことを目指します。アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚のバリア機能を維持するスキンケアを基本とし、湿疹を改善する薬物療法(主にステロイド外用薬)を使って、肌の湿疹や乾燥をおさえます。疾患や薬について正しい知識をもち、治療に取り組みましょう。
保湿(肌のバリア機能を整える)
アトピー性皮膚炎の皮膚は、一見きれいに見えても乾燥しています。保湿は乾燥・バリア機能の低下を補い、アレルゲンの侵入と皮膚炎の再燃を予防、痒みの改善につながります。皮膚のうるおいを保つ物質が不足して皮膚が乾燥した状態になると、角層が剥がれてすき間ができ、外からの刺激を受けやすくなったり、体内から水分が出ていきやすくなります。毎日のスキンケアとして継続的に行い、1日2回(朝・夕)保湿剤を塗りましょう。皮膚がテカる、またはティッシュが皮膚に付く程度が使用量の目安になります。
ステロイド(炎症を抑える)
ステロイドは炎症や免疫力を抑える大切な役割をしています。ステロイド外用薬の効果や安全性は多くの研究で示されており、アトピー性皮膚炎の治療薬として推奨されています。ステロイド外用薬はその強さによってⅠ~Ⅴ群に分類され、年齢や部位によって使い分けができます。現在でも、「ステロイドは怖い」と思っている方は少なくありませんが、適切な強さのステロイド外用薬を使用すれば、副作用なく安全に使用することができます。
副作用を心配して自己判断で塗る量を減らしたり、使用を中断してしまうと、かえって症状を悪化させたり長引かせたりすることがあります。長期に使用した後に突然やめた場合にも悪化することもあるので、使い方だけでなく使用の中止や薬の変更については、必ず医師の指示にしたがってください。